これは何でしょう?
これは、プロの職人が彫った木版です。インド・パキスタン・アフガニスタンのインダス川および並行して流れていたとされるガッガル・ハークラー川周辺に栄えた文明として知られているインダス文明(紀元前2500年~1500年)では既にこの木版を使った染料技術が出来ていたと言われています。この木版に天然の藍や草木の染料を塗り、白い綿の生地に型押しをして模様を付けて行きました。その技術は何百年どころか何千年も受け継がれており(凄い!!)、現代でも本物のアジャラックの生地を作っている職人がいます。
右の写真は実際に職人が生地を染め上げているところです。この写真はコロナ前の2019年に現地で撮られたものです。プロの職人は木版を置く位置、付ける染料の量など緻密な作業を集中して繰り返しこなしていきます。この模様は言わば全体像のアウトラインだけになります。次に職人は模様の中身となる部分に色を付けるために次の木版に色を塗ってその隙間に木版を押して模様を少しづつ仕上げて行きます。模様が複雑であるほど工程は多く、その分長い時間がかかります。また、やり直しやいわゆる“消しゴム”のような物はありませんので少しでも模様がずれるとその生地の商品価値は下がります。
インドネシアの「バティック」は有名ですね。うちのお店のお客様に木版の説明をしていると「バティックと一緒ね」と良く言われるのですが、バティックは18世紀頃に誕生したまだ新しい技術で、アジャラックと比べると歴史が遥かに若いんです。しかも、実は、バティックはアジャラックが伝わって出来た技術なのですが、「ジャラック?何それ?聞いた事ない。バティックなら知っているけど」と...こちらの方が先なのに、なぜでしょう??
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